労働法の規制強化に向き合うためには?
2012/04/01
今年は労働法の改正ラッシュです。
今回改正された労働者派遣法をはじめ、労働契約法、高年齢者雇用安定法、労働安全衛生法など、中小企業の現場に影響の大きいものばかりです。
かつては労働法についてそれほど深刻に考えない人もありましたが、今では遵守しなければ企業が成り立たない時代になってきています。
三重県でも、このところ労働基準法違反や労働安全衛生法違反で厳しい指導を受ける企業が相次いでいます。
労働者本人から損害賠償請求されたり、さらには労働基準監督署によって書類送検されるようなケースも増えています。
中小企業でも、労働法の違反は即経営危機に結びつきかねない時代なのです。
今年予定されている改正のうち、主なものは次のとおりです。
労働者派遣法
- 日雇派遣(30日以内の雇用)の原則禁止
- グループ企業内派遣の8割規制
- マージン率の公開義務化
- みなし雇用規定(施行は3年後)
労働契約法
- 有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、労働者の申込みにより無期契約に転換
- 雇止め法理の制定法化
高年齢者雇用安定法
- 継続雇用制度の対象者を労使協定の基準によって限定できる仕組みを廃止
- 継続雇用の対象者が雇用される企業の範囲をグループ企業まで拡大
労働安全衛生法
- 医師または保健師による労働者の精神的健康の検査を義務化
- 結果を通知された労働者が申出た場合の医師のよる面接指導の義務化
派遣法以外は現在審議中の法案ですが、今国会で成立することが見込まれています。
経営者からみれば「ここまでか」と思えるほど規制が強化される内容ばかりです。
非正規社員の増加、若年層の就職難、就業人口の高齢化、メンタルヘルス不調の増加・・・。
これらの問題点に対処していこうというのが国策である以上、規制は強化される流れになるでしょう。
上がり続ける社会保険料、パートの保険加入の問題ももちろん大きなテーマです。
長引く不景気や今後の増税など経営を取り巻く環境は厳しいですが、人に関する問題はますます頭の痛い問題になってきます。
中小企業の経営者としては、どうしたらいいのでしょうか?
ありきたりの言葉ですが、堂々と労働者と向き合うということなのだと私は思っています。
今回の派遣法改正で一番大きなテーマであるマージン率についても、まさにそうですね。
有期労働契約の反復更新にしても、定年後の継続雇用にしても、当事者と真正面から向き合うことでかえって道が開けることもあるはずです。
最近労務相談を受けていて私が思うのは、その場凌ぎの対応に終始していたり、経営者が本音をぶつけない会社は、やはり深刻なトラブルに発展する場合が多いのです。
逆に法律の規制は強くなっても、当初予想されたような混乱はまったく訪れない会社もあります。
それどころか、義務を守るために必死の努力を行う中で、かえって労働者との溝が埋まり、信頼関係が向上していくような例もあるのです。
労働安全衛生法にしても、労働者の健康を維持するために規制が強化されるのは、会社にとっても有意義なことです。
労働契約法、高年齢者雇用安定法にしても、会社の首を絞めるものととらえず、会社、労働双方のチャンスととらえるべきです。
法改正によって規制が強化される場合には、必ず次のような目線を持っていただきたいですね。
それは、会社が義務を果たしていく中で、労働者とコミュニケーションを取り、距離を縮めることはできないかということ。
こうした発想を持つ人は少ないですが、だからこそ経営者としての真価が問われるところ。
義務を義務ととらえず、必要な責任ととらえ、自分と現場とが一体になれるチャンスだと思える人は、会社を安定成長に導く人です。
特に目先の出来事ではなく、5年、10年、15年といったスパンで考えるなら、確実にそういえますね。
法律が経営者に求められる社会的な要請である以上、基本逃げることは許されません。
逆に引き上がったハードルと向き合うことがチャンスだととらえることができる感性。
大切にしていきたいものです。